2017年06月28日
 ■  【ハンナとハンナ】私がオジサンになっても

もし、あなたが住んでる町に、突然、難民が押し寄せきて、
しかも、彼らは、あなたの税金で生活保護を受け始めたら、
あなたは、何を思うだろうか?

「ハンナとハンナ」という物語の、魅力の一つは、
そんな「もし」を、あなたに訴えかけてくるところにある。

1999年の夏、イギリスのマーゲートという小さな町が舞台だ。
20年近く前のイギリスの片田舎の話。
観客の想像力がそこに留まってしまったら、演出の失敗だろう。
2017年の、日本の観客が見るのに、ふさわさしい作品にするには、
どうしたらいいのだろうか。

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出演者は若い。16歳と20歳、アンダースタティーは24歳。
もう私は、はっきりと確実にオジサンに写ってしまっている。

稽古はおもしろい。若いからか、漢字が読めない。
一人が、乳母車を「にゅうぼしゃ」と読んだ時には、
私は、爆笑してしまった。別のスタッフからは、
「今は、ベビーカーだったり、バギーだもんね」という言葉が飛ぶ。
言葉は更新されていくのか、良くも悪くも。

若いからか、知識も技術もない。
けれども、だからこそ、演技に変な癖がついておらず、
こちらが言ったことを、渇いたスポンジのように、
あっという間に吸収していく。これが、若さなのか。
自分もこの年代の時には、こうだったんだろうかと思うくらい、
とてつもないスピードで成長していくのが、わかる。

この人たちと、2017年の、日本版「ハンナとハンナ」を作るのである。

『ハンナとハンナ』リーディング上演
と難民をめぐるディスカッション@2017年7月11日
http://iti-japan.or.jp/announce/4279/

2017年06月14日
 ■  “議会”の“一般質問”を聞きに来ない?

「“議会”の“一般質問”を聞きに来ない?」と市議会議員をやっている友人から誘われたのは、今年の5月の頭だったと思う。“一般質問”という言葉の意味が、私にはわからなかった。わからないけれども、その後の、「うちの議会なんて、“シャンシャン議会”だからさー」という言葉に惹かれた。“シャンシャン議会”。政治の世界には、私の知らない言葉がいっぱいある。“異論もなく、あっと言う間に終わる”議会のことを言うのだそうだ。

というわけで、先日、私は、誘われるまま、ある市の議会の一般質問を聞きに言った。市役所の建物の中に議会があり、受付で「傍聴に来ました。」と言えば、誰でも簡単に傍聴できる。名前と住所を書いて傍聴バッチをもらう。席に座ると、お目当ての友人議員の一般質問は既に始まっていた。

議員が質問して、市の役人がその質問に答えるという枠組みで進んでいく。即興ではなく、事前に質問は共有されているのだろう、どちらも原稿を朗読している。“議会はシナリオのある学芸会”とは聞いていたが、特に、市の役人の朗読が棒読みだった。これはちょっと退屈だなあと思っていた矢先、私の友人議員が原稿を読みながら、泣き出した。驚いた。

彼女が泣き出したのは、義務教育の年齢でも、学校に行かない・行けない子どもたちがいるということを訴えていたあたりだったと思う。そういえば、子どもの貧困が広がっているという話を彼女がしていたことがあったっけ。日々の議員の活動の中で、貧困家庭の実態を目の当たりしている彼女は、特別に思うことがあったのかもしれない。

一般質問中に泣いてしまうのは、議会において有効だとは、私は思わない。実際、彼女の嗚咽が響く中でも、議会は淡々と進んでいった。しかし、同時に彼女の人間としての温かさや思いやりの深さに、とても強く心を動かされた。あんなにも他人の状況に対して、感情移入をしたことがここ最近あるか?アツト?

世界中で、仲間だと思える範囲が縮小している。新しくその国に入ってくる移民や難民を仲間だとは思えなくなっている。いや、そもそも日本では、移民や難民が入って来てないのに、元からあった仲間意識が縮小している。自分が逆の立場だったら。その想像力を持てないのだとしたら、そもそも私達は人間なのだろうか。

2017年06月10日
 ■  在外研修報告「ロンドン」

私は、2015年11月から2016年9月までロンドンに留学した。イギリスの2016年と言えば、Brexitだ。6月に国民投票があり、2015年11月の時点で、EU離脱か残留かその是非についてメディアが毎日取り上げていた。そういう雰囲気の中での留学体験だった。

ロンドンでの生活はまず部屋探しから始まった。私は最初、「イギリス人」とルームシェアすることにこだわった。英語力を伸ばしたかったからだ。もちろん、その時のイギリス人のイメージは白人だった。しかし、国際都市ロンドンにはあらゆる人種が集まっていて、地下鉄に乗っても英語以外の言語がガンガン聞こえてくる。やがて、イギリス人=白人なんて思っていた自分が恥ずかしいとさえ思うようになる。そんな中、私のルームメイト、若い白人イギリス人は「俺は右翼だよ。移民は問題を起こしすぎるから、EU離脱に賛成だ。」なんてことを笑顔で言う。右傾化するイギリスを生活の中で体感することになった。

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12月、私はYellow Earthと出会う。多数派が白人と黒人のロンドン演劇界で、東アジア系の演劇人の活躍の場を増やす活動をしている劇団だ。彼らはTyphoonという東アジア系劇作家限定の戯曲コンペもやっていて、40以上の応募作から6作が選ばれ、リーディング上演される。私も自作を応募し選ばれた。出演者の中国系イギリス人の俳優とも仲良くなり、自分たちをBBCだと言っていることを知る。英国放送協会ではなくBritish Born Chinese。バナナだとも言っていた。外見は黄色でも中身は白いと。

時間は進んで、国民投票の翌日。俳優として参加していたフォーラム・シアターの発表公演がその日にあった。芝居の主題は、搾取されるウェイター(外国人労働者が就く場合が多い)。EU離脱がその日の朝決まり、客席を巻き込んだ熱い発言が飛び交ったが、私は、どこか熱くなれないままでいた。どこの国でも演劇に興味がある人はリベラルな人が多い。でも、私のルームメイトのような普通の人が右翼的だったりするのも、今のイギリスの一つの真実で、そういう普通の人に対して、自分はどのような演劇をぶつけることができるのか。苦味が残る思い出だ。

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