2013年07月24日
 ■  こまつ座「頭痛肩こり樋口一葉」

どうすれば、面白い芝居が書けるようになるのか?
どうすれば、面白い芝居を演出できるようになるのか?

とにかく、いい芝居を見て、
これは何がいいのか?ひたすら考える。
つまらない芝居を見て、
これは何がつまらないのか?ひたすら考える。
それしかないのかもしれない。

「頭痛肩こり樋口一葉」を、紀伊國屋サザンシアターで見る。
せんがわ劇場の館長が、急に行けなくなったということで、
チケットをとても安く譲ってくれたのだ。

井上ひさしはあまり好きな作家ではなかったのだが、
この芝居にはとても引き込まれた。
いわゆる幽霊が出てくる話だった。手垢のついた手法だ。
しかし、このオーソドックスで目新しくない趣向にやられてしまった。

キャラクターだ。人物なのだ。
しかし、とりわけ濃いキャラだったわけではない。
遊女のお化け。死んだ理由も、遊女としては普通の理由。
丁寧なのだ。本当に肌理細かく丁寧に、人物を描いているだけなのだ。
彼女達の、その時代に生きた女たちの悩み、喜び、それだけを。

もちろん、個人と社会をつなげる作者の力業にも感動したけど、
それが無かったとしても、六人の登場人物たちに僕は心を打たれたと思う。
僕は、ついついアイディアで勝負しがちなのだが、
観客は、「人間」を見に来ていることは忘れてはならない。

同時に、劇場で見て良かったなあと思う。
最近、芝居の勉強を机の上だけでやっている気がするが、
劇場で芝居を見て考えることこそが、最も大事なのではないか?
お客さんと呼吸しながら、一緒に芝居を見るのだ。

「頭痛肩こり樋口一葉」は、観客と一緒に呼吸しようとしていた。
少なくとも、井上ひさしには、その志があった。
何度も繰り返される、お盆の歌。
最初は、別に気にも留めなかったメロディーだったが、
繰り返される度に、どんどんやみつきになる。

やっぱり、お芝居はおもしろいなあ。

2013年07月15日
 ■  読書日記2013年7月 その1

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「室内」
モーリス・メーテルリンク著
倉智恒夫・訳

「フランス世紀末文学叢書12」より、
メーテルリンクの、「室内」「群盲」「タンタジルの死」「忍び入る者」を読む。

四篇に共通しているのは、死が忍び寄ってくるという構造だ。
そして、他の三篇が、死を受け取る側の視点から描いているのに対し、
「室内」は、死を受け渡す側の視点から描いている。
それがとてもユニークに感じた。

言い換えれば、死神の視点から、
"幸福な生"="室内"を描いているのだ。
対話劇だが、台詞が長いので、モノローグのようでもある。
その長台詞は哲学的であり、
真っ黒な底なし沼に落ちていく時のような、
残酷な快感がある。

いつか演出してみたい戯曲だ。

2013年07月12日
 ■  鈴木アツト2013年演劇活動予定

鈴木アツトの2013年の活動予定です。

劇団印象-indian elephant-では、
常に志を共にできる俳優やスタッフとの出会いを求めています。
僕らの活動にご興味がある方は、
atsutos★inzou.com までご連絡ください。
※★を@に変えて、お送りください。

そして、観客の皆様、
演劇にできることは少ないとは言え、
見に来てくださる皆様に、何かしらを手渡せればと思っています。


9月
●日本演出者協会 日本の近代戯曲研修セミナー
~特集・久保栄~
「火山灰地」 
参加:鈴木アツト

日時:2013年9月16日(月・祝)
会場:芸能花伝舎


10月
●劇団印象-indian elephant- 10月公演
第20回BeSeTo演劇祭BeSeTo+参加 日韓国際共同制作
「値札のない戦争」 作・演出:鈴木アツト
出演:ベク・ソヌ、ヤン・ヒョユン、泉正太郎、根本大介、他

日時:2013年10月24日(木)~28日(月)(予定)
会場:こまばアゴラ劇場
http://www.inzou.com/beseto/index.html


11月
●モズ企画 韓国新人劇作家シリーズ第2弾
「罠」 作:ホ・ジンウォン
翻訳:金世一 演出:鈴木アツト
出演:本家徳久、保亜美、広田豹、加藤亮佑

日時:2013年11月27日(水)~12月1日(日)
会場:新宿・タイニイアリス


2014年3月
●劇団印象-indian elephant-
「グローバル・ベイビー・ファクトリー Global Baby Factory」
作・演出:鈴木アツト
出演:小山萌子、水谷圭見、他

日時:2014年3月26日(水)~30日(日)
会場:調布市せんがわ劇場

-----終了した公演-----

2月
●韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.6
「海霧」 作:キム・ミンジョン 
翻訳:宋美幸 演出:鈴木アツト
出演:狗丸トモヒロ、大西健次、加藤亮佑、金田海鶴、島田静仁
 谷英明、根本大介、林英樹、保木本佳子、水谷圭見、吉田俊大

日時:2013年2月20日(水)、22日(金)各19時
会場:三軒茶屋・シアタートラム
料金:1500円
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/02/2013_2.html


3月
●若手演出家コンクール2012 最終審査公演
「青鬼」 作・演出:鈴木アツト
出演:金恵玲、泉正太郎、吉田俊大、実近順次、ベク・ソヌ   

日時:2013年3月6日(水)19時、9日(土)12時
会場:下北沢・劇小劇場
料金:2000円
http://www.inzou.com/aooni13/


5月
●福岡演劇フェスティバル・FFAC企画
創作コンペティション 『一つの戯曲からの創作をとおして語ろう!』vol.4
「或る別な話」 作:別役実 
演出:鈴木アツト
出演:島田静仁、難波真奈美、金恵玲、泉正太郎

日時:2013年5月18日(土)19時、19日(日)15時
会場:福岡・ぽんプラザホール
料金:前売券1000円/当日券1200円
http://www.inzou.com/betsuyaku/


6月
●第4回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品
「終の棲家」 作・演出:鈴木アツト
出演:荒井眞理子、難波真奈美、金田海鶴、今村有希、吉田俊大

日時:2013年6月8日(土)15時
会場:調布市せんがわ劇場
料金:無料
http://www.sengawa-gekijo.jp/kouen/09329.html


●日本劇作家協会『月いちリーディング』
「匂衣~The blind and the dog~」 作:鈴木アツト
出演:丸本陽子、山田奈々子、宇宙、鶴牧万里、寺本佳世、広田豹
   
コーディネイター:中津留章仁
ファシリテイター:夏井孝裕
ゲスト劇作家:松田正隆、黒澤世莉

日時:2013年6月29日(土)18時
会場:座・高円寺
料金:無料
http://www.jpwa.org/main/activity/reading-workshop

2013年07月04日
 ■  「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」 2013年6月30日の日記

「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」を見に、
久し振りに原美術館に行って来た。

初めて海を見る人々の表情をとらえた映像作品「海を見る」(2011年)、
失明した人々を取材し、
写真とテキストで綴った「最後に見たもの」(2010年)、の2部構成。

hara-museum.jpg

「海を見る」は、想像よりは、凡庸な作品だった気がする。
大人になってから、初めて海を見た人の内面に迫っていたかというと、
迫りきれてない気がした。
映像ではなく、写真で表現したほうがよかったんじゃないか?
初めて海を見た子供たちの映像(みんな、海に入って、ジャブジャブ遊ぶ)は、
おもしろかったけど。

「最後に見たもの」は、
ものすごく暴力的な作品で、エピソードも多彩でおもしろかった。

ソフィ・カル展は、松田正隆さんが薦めてくれた。

月いちリーディングの時に、「匂衣」は、
宮沢章夫さんの著書「演劇は道具だ」の中で、
宮沢さんが、ある写真家の「盲目の人々」という展示について書いた文章に、
inspireされて発想した作品だったことをみんなに話したら、
松田さんが、
「それ、ソフィ・カルだよ。今、展示やっていて、
明日まで原美術館でやってるから見に行けば?」
と教えてくれたのだった。

ミュージアムショップで、「盲目の人々」の写真集も売っていた。
点字の装丁、写真、テキスト、どれを取っても刺激的で、
僕は、ソフィ・カルの作品では、この「盲目の人々」が一番好きみたいだ。

数年前まで、原美術館から歩いて15分くらいのところに住んでいたから、
街並みが懐かしかった。
ただ、僕の住んでいたマンションは、もう取り壊されてなかった。
時は過ぎていく。

2013年07月02日
 ■  月いちリーディングを終えて2013

今年の、月いちリーディングも終わった。

松田正隆さんと直接、演劇について語ることができて、嬉しかった。

matsuda.jpg
松田正隆さんと鈴木アツト@終了後の懇親会

松田さんは、

マイノリティーを描写する時に、
マジョリティーをマイノリティー化する方法をとっていく、
境界線をどんどん曖昧にしていく、薄くしていく、
後半、特に、そのことに成功している、非常に稀な戯曲。

普通は、マイノリティーを描写する時に、
マイノリティーのコミュニティーや、アイデンティティを描いて、
観客に同情を引く、同化させていく方法をとることが多い。

社会問題を扱うにしても、
虐げられた人を見せて、二項対立で、差異を積み上げ、
壁を積み上げ、というように、書きがちだが、
「匂衣」は、差異や膜をどんどん薄くしていく。
そのことに、非常に魅力を感じた。

と、「匂衣」をとても気に入ってくれた。

差異や膜を薄くしていく、というのは、
僕自身が心掛けている生き方でもあるので、
それが作品にも宿っていたのなら、本当に嬉しい。

他にも、
メーテルリンクや、ストリンドベリという、映画が生まれる前後の時代に、
演劇に何ができるかを探求していた作家群を読んでみたら、
君の作品に参考になるんじゃないかというアドバイスをいただいた。
新たな勉強の種をいただいたのだから、しっかり育てて、花を咲かせたい。

松田さんの「匂衣」の読み方でとても印象的だったのは、
登場人物が少ないからというものあると思うが、
台詞を言わないで、舞台に存在している人を、
すごくよく見ていた(読んでいた)ところだ。
特に、彩香と万丈が化粧をするシーンの、
ベク・ヨンジュがおもしろいとおっしゃったことに、
書き直すヒントがあるように思った。

全体的には、あらためて、
人の意見を聞いて、書き直すことの難しさを感じてしまった。
ディスカッションそのものは楽しいんだけど、
いざ書き直す時に、どう参考にしていいか、わからなくなってしまうのだ。

長所と短所は光と影になっていて、影を削ると光も削られてしまうという問題。
あと、個性。他人の意見を、自分の個性を損なわないように取り入れるには、
どうしたらいいのか?少しゆっくり考えたい。

関連エントリー:
月いちリーディングを終えて(2012)