2012年07月31日
 ■  2012韓国演劇祭日記 7/31

2012年7月31日(火)

久し振りに、密陽市の方まで出て、外食。
前回、食べて美味しかったミル麺屋さんに連れてってもらう。

午後は、演劇祭で、セミナーに参加して、その後、他団体の公演を観劇。

セミナーのテーマは「演劇による地域(都市と都市の)交流」だったのだが、
李潤澤さんのスピーチには、またしても考えさせられた。
大阪の橋下市長の文化予算カットの話などが参加者から出たのだが、
それに対して、李潤澤さんは、

交流は、芸術家による芸術家的な選択によってされるべきだ。
政府を信じることはできない。
支援金(助成金)は、毎年もらうことができないし、
支援金をもらってから作る作品に、成功する作品はない。

貧乏だけど、独立した演劇を、芸術的な意思を持って作るべきだ。
作品が良ければ、支援は後からついてくる。

口で言うほど、簡単なことではないけど、
この人は、それを長年やってきたのだ。
密陽演劇祭も、最初の年は、自腹でやって、
どこからもお金をもらえなかったけど、
若手で有望な演出家をたくさん招いて、
それで評判になったら、
次の年から、密陽市が4億ウォン出してくれるようになったとか。

貧乏だけど、独立した演劇を、芸術的な意思を持って作る、か。

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匂衣のポスター・別バージョン

2012年07月30日
 ■  2012韓国演劇祭日記 7/30

2012年7月30日(月)

あっという間に、密陽演劇祭での公演最終日。
実は、今回僕は音響オペをやっている。
作家だからと言って、何もせずにブラブラしていることは許されず、
予算がないので、できることはなんでもやらなければいけないのだ。

今日のステージでは、
音響でありえないミスを連発してしまった。
思ったより、照明卓が暗くて、キーを間違えて押してしまったのだ。
それも何度も。俳優のみんなに申し訳ない。
整った環境でうまくやるのは普通のこと。
劣悪な環境でも、いい仕事をしなければプロとは呼べない。

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終演直後の龍田知美と、ぺ・ミヒャンさん

自分たちの芝居が終わったら、
大阪の俳優たちを、李潤澤が演出した、
太田省吾の「小町風伝」を見る。
書かなければいけない原稿もあり、
今年の2月に、大阪で見ていたので、
今回は見るのをパスしようかなとも思ったのだが、
素晴らしい作品は何度見ても素晴らしかった。

戯曲が素晴らしい。演出も素晴らしい。
テーマの一つ、老人の性というモチーフは、
谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」にも重なる。
そして、自分の死と出会う老女。
見ることにして、本当に良かった。

2012年07月29日
 ■  2012韓国演劇祭日記 7/29

2012年7月29日(日)

密陽演劇祭での、公演初日である。
ただ、あまりにもバタバタで、結局、ゲネはなし。
場当たりも完全にはできない状態で、臨んだ。

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なんとか完成した犬の人形

韓国語字幕のオペレーションするために、
劇団から借りたPCにPowerPointが入ってなかったり、
いろいろトラブルがあったが、
そもそも、事前の準備不足が原因だ。
勝手がわかっている環境ではないのだから、
入念な準備が、すごく重要だったのに、
僕らはそれを怠ったのだと思う。
(字幕用PCは僕らのチームで用意するべきだった)

なので、出来は悪かった。
笑いの部分でのお客さんの反応は悪くなかったけど、
(韓国の観客はそもそもノリがいい)
今年の3月の公演では、
後半のシリアスな部分で引き込めていたけど、
(彩香と万丈の化粧のところとか)

今日は、後半のシリアスな部分から、
お客さんの集中力が途切れていった気がする。
(笑いのシーンでもリズムが悪いところがあったから、その影響もあると思う)

いい芝居を作れば、観客はいい反応を返してくれる。
それは、日本でやろうが、韓国でやろうが同じだ。
でも、細部に少しでもダメなところがあると、
観客は、外国語で上演される芝居から、あっという間に集中力を切らす。
より反応がシビアだ。

2012年07月28日
 ■  2012韓国演劇祭日記 7/28

2012年7月28日(土)

3時半に寝たので、8時前に起きるのはちょっとつらかった。
でも、朝食は、頑張ってご飯を2杯食べる。

正太郎の活躍により、
犬の人形はどんどんできていった。
まだ完成はしてないけどね。

稽古後、ドヨから密陽に移動して、
足りない衣装や小道具を探し、
20時から日本の劇団の児童劇、
22時から演戯団コリペの「ハムレット」を見る。

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「ハムレット」観劇後に

コリペの「ハムレット」は、普通の「ハムレット」では全然なかった。
悲劇ではなく、祝祭劇とでもいうようなものだった。
1200席の野外劇場がぎゅうぎゅうの満杯。
詩と死、性と生に溢れた李潤澤演出の2時間半は、
正直、僕にはちょっと疲れた部分もあったが、
観客に何を見せたいのか、その思想がはっきりと表れていて、
素晴らしかった。

観客も、コリペのファンなのだろう。
老若男女、誰もがコリペの芝居を楽しんでいるのだ。

見ていたら、自分にとって、演劇とは何なのだろうか?
と考えざるを得なくなってしまった。
何をしたくて、演劇をやっているのだろう?
人生を、僕はどう生きたいのだろう?
きっとその答えを、明確に形にしないと、
本当に強度のある芝居は作れないのだと思う。

2012年07月27日
 ■  2012韓国演劇祭日記 7/27

2012年7月27日(金)

朝7時半起床。8時食事。
8時半から9時半まで、短編の構想を練る。
演戯団コリペでの生活が戻ってきた感覚である。

9時半から稽古開始。
今日は、演劇祭の他の演目を見には行かず、
一日稽古である。
23時半で稽古終了。
そして、深夜0時から2時半まで、小道具制作。

昼食、夕食休憩が各1時間強あるとは言え、
タフな一日だった。

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東京で新しく作っていた犬の道具が、
芸術監督の李潤澤氏の判断によって、却下になったので、
この写真のとおり、元々あった犬の人形を作り直して使うことになった。
本番まであと一日。間に合うのか?

2012年07月26日
 ■  2012韓国演劇祭日記 7/26

2012年7月26日(木)

やってきました、密陽(ミリャン)演劇祭。
匂衣のポスターも貼ってあり、俳優陣はそこで記念撮影!

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16時頃、金海(キメ)空港に到着。
空港から、宿舎のあるドヨに向かい、
ご飯を食べて、荷物を置いて、即、密陽演劇村へ。
この日は、三島景太さんの出演している身体の景色と、
もう一本の作品を観劇。
匂衣の稽古はなし。
稽古が、明日と明後日の2日間だけなのが、不安。

2012年07月18日
 ■  読書日記2012年7月 その1

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「グローバリズム出づる処の殺人者より」
アラヴィンド・アディガ著
原題「The White Tiger」by Aravind Adiga
鈴木恵・訳

インド人作家が英語で書いた小説。2008年ブッカー賞受賞。
仰々しいタイトルだが、原題はThe White Tiger。
出版社が日本で売るために、このタイトルにしたのだろう。
インドの壮絶な格差社会を描いているが、
文体が特に素晴らしいとは、僕は思わなかった。

格差、カースト、差別、それを象徴するのが、
英語の習得度合(正しい発音)や、肌の色、そして、金という、
インドの身も蓋もない現実を、男性目線で描いた作品である。


「グアヴァ園は大騒ぎ」
キラン・デサイ著
原題「Hullabaloo in the Guava Orchard」by Kiran Desai
村松潔・訳

男性インド作家の次は、女性インド作家の小説を読んでみた。
第一章が素晴らしい。
文体は、色とりどりの言葉をぐつぐつ煮込んで、
食べたことのないようなスープにしたような感じで、
読んでいると、視覚だけでなく、嗅覚や聴覚も刺激される。

この小説は、
雨季(モンスーン)の到来の最中、
ある女が出産するシーンから始まるのだが、
アルンダティ・ロイという別のインド女性作家の小説の冒頭も、
モンスーンのシーンから始まっていた。
インドの作家にとって、モンスーンは、
非常に大事な感性の源になっているのかな?

日本語訳がすぐ手に入るインドの小説は、
インド人作家が英語で書いたもの(多くはイギリスのブッカー賞受賞作)で、
基本的には中産階級以上の出身が書いているということになる。

そういった作品群が
どれだけ貧困層の現実を反映しているかわからないけど、
女性がお化粧したい、お洒落になりたい、
ファッショナブルでいたい、と思う感性。
天気、季節の変化によって、日々の思いが動いていく感性。
そういったものは、日本人女性のそれと根本的には変わらないのだと、
僕は信じることにした。

2012年07月10日
 ■  「一級品人間」出演者決定!

10月・11月の公演、「一級品人間」の出演者が決まりました!

韓国新人劇作家シリーズ第一弾!
2012年10月31日(水)~11月4日(日)

『一級品人間』
イ・ナニョン作 翻訳:李知映 演出:鈴木アツト

出演:日下範子、加藤大騎、仲谷智邦、比佐仁

【あらすじ】
一流の人間になるために、身体の一部を別の人間と入れ替えていく世界の物語。

ある平凡な家庭、一流企業に就職させるために息子の脳を一級品の脳と交換した両親がいた。しかし、息子は、両親が思うような知性的な天才にはならず、慌てた母親は父親に、肝臓を売って、もう一度、息子のために一級品の脳を買うべきだと主張する。そして、父親の肝臓と交換に、より素晴らしい脳になったはずの息子は、両親の想像を越える行動を取り始める。

料金:前売3,000円(全席自由)
場所:タイニイアリス
お問い合わせ:モズ企画 info@mozukikaku.com

2012年07月06日
 ■  鈴木アツト in 韓国

7月になりました。
2012年もあと半分ですね。

僕は、2012年7月8月9月と
韓国の演劇祭に参加します!
密陽と居昌は遠いですが、
D.Festaは、ソウルでの公演ですので、
観光も兼ねて、是非、遊びに来てください!

密陽夏公演芸術祝祭
会場:密陽演劇村 演劇図書館
7/29(日)17:00開演(予定)
7/30(月)17:00開演(予定) 

居昌国際演劇祭
会場:太陽劇場
8/2(木)20:00開演(予定)
8/3(金)20:00開演(予定) 

『匂衣~The blind and the dog~』
作 鈴木アツト 演出 荒川貴代
出演 龍田知美 泉正太郎 李潤姫 日下範子 功刀達哉


D.Festa 大学路小劇場祝祭
会場:소극장시월(小劇場シウォル)
9/14(金)20:00開演(予定)
9/15(土)16:00開演(予定)
9/16(日)16:00開演(予定)

『青鬼』
作・演出 鈴木アツト
出演 龍田知美 泉正太郎 ベク・ソヌ他

2012年07月01日
 ■  月いちリーディングを終えて

月いちリーディングが終わりました。
「グローバル・ベイビー・ファクトリー」は、
すごく評価が高かったです。
出演者がとても楽しんで演じてくださって、
永井愛さんからも、いろいろお褒めの言葉をいただきました。

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永井愛さんと鈴木アツト@終了後の懇親会

永井さんは、今日締め切りの台本が、まだ十数ページしか書けてないと、
嘆いておりました(笑)
なのに、朝の3時まで、いてくれました。

僕は、作風は違うけど、
永井さんの戯曲が大好きだったから、
永井さんの回の月いちに選ばれて、本当によかったです。
どうもありがとうございました!

ディスカッションでは、永井さんから、
「代理出産の話ではなく、価値観の話として読んでいた。
この作品の質がどこに行くのか、後半、
インドの代理母の話になっていった時にしぼんだと思った。
インド社会をどう描くかが課題では」
という厳しいコメントもいただきましたが、概ね好評でした。

ドラマリーディングとディスカッションは、
Ustのアーカイブで、見れます。

ドラマリーディング前半
http://www.ustream.tv/recorded/23663846

ドラマリーディング後半
http://www.ustream.tv/recorded/23664440

ディスカッション
(53分58秒ぐらいからが永井愛さんのコメントです)
http://www.ustream.tv/recorded/23665206

というわけで、
酷評の嵐が待ち受けているかと思っていた僕は、
ホッとしたし、物足りなくもありました。
でも、戯曲賞の選考会では、
作品を褒められたことはあまりないし、
昨日ぐらいはいいかなあという感じです。

ブラッシュアップのためのこの企画を経て、どう書き直すか、
これから戦っていかなければなりません。