2011年09月30日
 ■  読書日記2011年9月 その2

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「女子寮記」
山田時子・著
敗戦直後の演劇に、新劇以外の流れがあったことを最近知った。
職場演劇とか自立演劇とか言うんだそうだけど、
今で言えば会社の演劇サークルみたいなもんで、
これがやる方も、見る方も、とても盛んだったそうだ。
素人のものと馬鹿にできない作品もたくさん出たらしい。

その職場演劇から出た素晴らしい戯曲がこれ。
何作か読んだだけだが、新劇の作品が、
人間の内面や精神的なことを、抽象的かつ象徴的に描こうとしたのに対し、
「女子寮記」はものすごく物理的なことを具体的に描いてる。
つまり、日々のお米がいくらで、月々の給料がいくらで、という、
生活のコマゴマとしたことそのものがテーマだ!という感じ。

物の値段がとにかくよく出てくるので資料価値も高い。
作者に特に意図はないと思うが、
終戦して2年しか経っていない昭和22年12月に、
もうクリスマスパーティーをやっていたということが
スケッチされているのも興味深い。


「『日本』をめぐって 網野善彦対談集」
網野善彦・著
歴史学会の専門用語が多くて難しかったけど、全体的にはおもしろかった。
SFCの教授の小熊英二が舌鋒鋭いのでファンは是非読んでください。
百姓は農民ではなかった、という主張は目から鱗。
江戸の知られざるネットワーク型社会は凄かったんだね。

2011年09月25日
 ■  読書日記2011年9月 その1

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「その人を知らず」
三好十郎・著
唐十郎以降の劇作家については、なんとなくイメージを持てるのだが、
それより以前の作家については、全然知らない。
その中で三好十郎は、作品は読んだことがなかったが、
その高名が轟いていた。

この作品は、あるキリスト教の信者がその信仰のため
(汝、殺すなかれの教えを守るため)、
徴兵を拒否するエピソードを中心に、その男の周りの人々の群像劇。
場面転換が多いからか、集中がやや途切れ途切れになる感じがした。

正しいことを、一点の曇りなくやろうとする男のそばにいると、
周りの人間は悉く不幸になる。その様子は滑稽であり、悲しすぎる。
終戦を挟んで普通の日本人がどう普通に変容したかもわかる。
ただ全体的に重すぎ。
重たいのが悪いのではなく、重たい色、一辺倒なので単調なのだ。


「廃墟」
三好十郎・著
「その人を知らず」や「廃墟」の前半を読んだだけだと、
三好十郎というのは、論理的な作家だと勘違いしてしまう。
が、「廃墟」を最後まで読むと、
クライマックスの凄まじい長台詞の応酬・議論のぶつけ合いがあっても、
論理的には全く何も解決しない、なのに爽快な読後感。

長台詞に込められたその熱量は半端じゃない。
つまり全然論理の作家じゃない。
「廃墟」は、ワン・シュチュエーションなのもいい。
場が変わらないから、最後までエネルギーが溜まっていく
ドキドキ感がある。噴火もあるし。
前半では、お光というキャラクターがジャガイモを盗む描写が秀逸。

2011年09月12日
 ■  読書日記2011年8月 その4

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「水木しげるのラバウル戦記」
水木しげる・著
ラバウルという地名は、ある年代以上の人にとっては
太平洋戦争時の南方の激戦の象徴的固有名詞のようだが、
僕らの世代にとっては全く馴染みのない単語だ。
でも、僕のお祖父ちゃんもこの地に出征していた。

この本は、
南方の激戦と日本兵がその時どういった生活をしていたか、
の資料にもなっているし、
水木しげるの妖怪創作のインスピレーションが
どこから来たのかを知ることができる。
その意味でとても面白い本。

妖怪という想像上の生き物であっても、
作者の背景・体験と密接に関わってるから、
妖怪のキャラにリアリティーがあるんだな。

僕は、前作で妖精を作品に出して、大変苦労した。
それは僕の中で、妖精という存在が、
自分の背景・体験とつながっていなかったから。
頭の中だけで作ってしまって、
記憶や身体と結び付けられなかったのだ。
次にもし想像上の生き物を出す時のヒントをもらえた気がした。

もう一つ。作中に従軍慰安婦についての記述が出てきたが、
従軍慰安婦というと、
朝鮮の人がさせられていたというイメージが僕の中にはあったが、
沖縄の人もさせられていたらしい。
本土の人の慰安婦はいなかったのだろうか?
知らないことがたくさんある。


「トペトロとの50年 ラバウル従軍後記」
水木しげる・著
ラバウル戦記の続編。
主に、復員後の生活と、
その後漫画家として成功した後に訪れるラバウルでの後日談。
敗戦後の女の人の服装が多数スケッチされていたのが、
資料としてありがたかった。

2011年09月03日
 ■  読書日記2011年8月 その3

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「ナイチンゲールの沈黙」
海堂尊・著
「チーム・バチスタ~」の続編。
ちょっと、設定がぶっとびすぎてて、入り込めなかったし、
犯人もすぐわかっちゃったし(作者に隠す意図がなかった)、
なにより登場人物が多すぎでは?


「やりたいことがないヤツは社会起業家になれ」
山本繁・著
とある飲み会で、著者に会ったのがきっかけで読んだ。
友人の駒ちゃんと同業。そして、同じように頭の回転が速い感じがした。
世の中、社長になろうとする人は勤勉だ。
怠惰な自分が恥かしくなる。あああ。


「お稲荷様って、神様?仏様?」
支倉清/伊藤時彦・著
サブタイトルが「稲荷・地蔵・観音・不動/江戸東京の信心と神仏」。
日本人の信仰・宗教観について、調べたくて読んだ。
浅草寺が神仏のデパートだって知らなかったし、
神仏習合について、もっと知識を得たい。

日本人の信仰の主流は、現世利益を求める祈祷信仰であり、
制度としての檀家制度は葬式や先祖供養だけに限られる。
哲学的な教義や来世思想は
一人ひとりの信仰の内実にはほとんど浸透しなかったのではないか?
というようなことが書かれていた。