2005年12月20日
 ■  グリング「海賊」について

流行りの口コミインフルエンザに感染して、
グリングの「海賊」を見に、下北沢へ。
ネットでの評判どおり、笹野鈴々音という役者が、
快演、はたまた怪演で、すごかった。

彼女の演じた役は、お菓子屋の娘で、
それとは関係なく、
「ナニナニですわ」とかお嬢言葉を使うキャラクターなんだけど、
それが、白鳥麗子調でもなく、もちろん、叶姉妹調でもなく、
持って生まれた生来の明るさゆえに、
お嬢言葉になってしまうのですわ調だった。
だから、全然嫌味でなく、愛すべき下町のお嬢様という感じだった。
(舞台が下町がどうかは知らないが)

もう一人、よかった女優がいて、こっちは、峯村リエ。
そんなに美人ではないが、背が高く、髪が長い。
イメージとしては、坂本竜馬の姉の乙女さんという感じで、
ただ、性格は、お転婆ではなく、
向田邦子の「あ・うん」の、たみさんという感じかな。
和服が似合っていたし。
彼女が、感情の抑えがきいたフラダンスを、
ムーンリバーに合わせて踊るシーン、これがとてもいいのだけど、
僕が、好きだったのは、帯を直すか何かで、
長い髪を下ろすシーンがあって、
それを別の役者が見ているというところが、
なんとも色気があってよかった。
髪を下ろしていたのがよかったのではなく、
髪を下ろしていたのを見られているというのがよかった。

笹野鈴々音は、全編を通して、印象的で、
峯村リエは、ポイントで、とてもよい、そういう配置かな。
この二人は、ちょっと抜けていて、
他の役者は、うまいけど、華がなかった。

お芝居全体としても、以前に見た、松尾スズキの、
ドライブインカリフォルニアに似ていて、
そちらに比べて、ちょっと華がない、
味はあるけど、華がないという感じがした。
その、華のなさは、狙いなのかもしれない。
どちらも、チェーホフの桜の園モチーフなのだが、
(かつて生活の主体であったある場所に登場人物たちが戻ってくる)
一方が、何十年かに一度、竹の花の咲く竹林に囲まれたドライブイン、
もう一方は、父から次男に相続された、流行ってはいないが、
すぐにつぶれるというわけではない、理髪店。(そこに長男が帰ってくる)
つまり、場所の設定からして、中途半端。やはり、わざとか?

結局、オフビートで、2時間10分の作品というのが、よくないのかもしれない。
僕は、もうちょっと、役者も、演出も、物語も、華があるのが見たいと思った。
まあ、好みだろうけどね。